moG Reports

23 September 2013
イギリスを旅して

学校菜園や菜園教育は、 子どもと庭のムーブメント教育として、アメリカや日本、またイギリスやフランスなどのヨーロッパ諸国のみならず、世界的に広がりつつある新しい教育方法であるように思います。

2011年夏に英国を旅しました。パリからヨーロッパに入り、ドーバー海峡を船で渡りイングランドへ、英国(主にコッツウォルズと南イングランド)で17日間を過ごしました。あくまでもバカンス、遊び旅行でしたが、旅の途中に庭巡りをしながら、イギリスにおけるコミュニティガーデンや菜園教育事情について見たり感じたりしたことを、まとめてみました。

1. Wisley Garden

ウィズリーガーデンはロンドン郊外にあり、英国王立園芸協会(RHS)が運営する240エー カーの庭園で、世界中の庭好きにとって、聖地のようなガーデンです。研修制度があり、ガーデンボランティアも多く、広大な敷地ですが、どこも良く整備されています。2098年に始めて英国を訪れて以来今回で4回目になりますが、来る度に新しい発見があり常に進化続けている印象のガーデンです。

ガーデン巡りは、イギリスにおいても中高年の趣味のようですが、ウィズリーガーデンでは夏休みなのもあり、子連れのグループが大変多く、芝生でピクニックしたり鬼ごっこしたり、プレイグランドやキッズプログラムもあり、若いママや子供たちにとっても魅力的な場所のようでした。

"Teaching Garden"について紹介します。 2007年夏に、主に子どもたちの教育の場として、ガラス温室と共にオープンしました。


入り口の看板にはこう書かれています。

"This Teaching Garden is designed to encourage school groups, families and adults to get gardening. The garden contains examples of different habitats to show the way plants are adapted to varying environments. Fruit and vegetables are grown in the plots to show how plants are grown for food, and water conservation and sustainable living are demonstrated."

この教育のためのガーデンは、子どもたちや学校の先生、ファミリーや一般の人たちが、ガーデニングを学ぶことを目的にデザインされています。 変化に富んだ自然環境に植物がどう適応しているか、様々な生育相のサンプル(乾燥を好む植物を集めた区画や、逆に湿地を好む植物が植えられた区画など)があり、果物や野菜がどのように食物として成長するかを紹介する花壇もあります。水保全や持続可能な生活についても展示されています。

野菜のベッド と コンポストボックス



このガーデンのデザイナーであるClive West氏が、”Teaching Garden”オープン前、イギリスの新聞インデペンデント紙にこのような記事を書いています。(2007年6月23日)

一部、訳して抜粋します。

ガーデンのデザインはあくまでもシンプルであること、これが重要です。ディズニーランドのようなテーマパークにある要素ー明るい色やボタンで動くデジタルなものーは必要ありません。それらは子どもたちの無限の想像力を邪魔します。ボタンは子どもたちの頭の中に既にあります。

この庭は、園芸だけでなく、生物、美術、国語、科学などあらゆる科目に応用でき、あらゆる可能性に溢れています。教育の場として様々な角度からアプローチができるよう、できるだけ多くの種類の植物を選び植栽しました。私がガーデンに色付けをするパレットには、植物の色だけでなく、形、質や香り、その他、薬用や食用などの有用植物・・・色々な絵の具を組み合わせて、太い筆で大胆に色づけするのではなく、(池の周りを取り囲むダイナミックな宿根草のボーダー花壇を羨望の目で眺めながら)細い筆で丁寧に塗っていきました。

最後にこう結びます。 地球は本当に温暖化しているのか? 子供たちがこの庭で何を学び、そしてこの庭で学んだ子どもたちが50年後、どのような大人になっているのか?  社会はどう変わっていくのか?それは誰にも分かりません。 私は子どもたちが、私たち(世代)が犯した間違いから何かを学んで欲しいだけなのです。

(記事の前半部で、 前年にトマトが露地栽培で成功した経験から、イギリスでは本来ハウス栽培であるトマトを、このガーデンに露地植えしたエピソードが書かれています。)

サンタクルーズ大学で行われている”Life Lab”は教育機関から発信されたものですが、こちらは庭園から発せられたものです。成熟した庭園文化を持ち、生活の中に園芸があるイギリスだからこそ、実現できたのでしょうか。ここはLaboratoryの要素より、Gardenとしての要素の方が大きく、ビジュアル的にとても洗練されていました。

“Teaching Garden”はとても挑戦的なプロジェクトであると言いながら、このプロジェクトの目標などについて明確に書かれていないのも、トマトの話しをしながら地球温暖化に関しても明言していないのは、あくまでもガーデナーという立場で書かれた記事であるからかも知れません。

一緒にオープンしたグラスハウス と 池の周りの宿根草ボーダー花壇



2008年夏にオープンしたプレイグランドについて紹介します。

Wild at Wisley
 

Den Building  Make your own den or tepee for hiding or sheltering!

自分たちの秘密の遊び場を作ろう!



イギリスのプレイグランドは、木製のシンプルなデザインの遊具が主流で、公園の質が高いように思います。 以下の写真のように、必要だから作るのではなく、ここに木が一本あり、これは何に使えるかな? よし、ドラゴンにしよう! そういう発想で作られた遊具は、子どもたちの想像力が高められ、遊びの楽しさが広がります。



日本では、高温多湿で木材を使った遊具は腐食の問題もあり難しいと思いますが、遊具が無駄にカラフルだったり、あまり人気のない動物型遊具がぽつんと置かれていたり・・・ 公園の質の低さは、都市計画に携わる行政のオジさま方のセンスのなさか、文化的レベルが低いのか・・・。子どもの豊かな感性を育み、自発的に遊びを楽しめる、もう少し子どもの目線で考えた遊び場が増えたらいいな〜と。

その他、ウィズリーガーデンで撮った写真です。

子供たちのプチワークショップ — 花の種を播こう!— 気軽に簡単に参加できるスタイルでした。


ランチを食べたCoservatory cafeの 草花を組み合わせて植込みしたコンテナ プチトマト、バジル、インゲン、カボチャ、マリーゴールドなど。 イギリスでも菜園はブームのようです。


2. Regent Park

リージェンツ・パークはロンドンにある王立公園の1つで、総面積500エーカー、芝生も公園もきちんと整備、管理されています。ロンドンは緑が多く、市内の約40%が公園と緑地です。公園内にある400品種、3万本以上バラが植えられている、クイーン・メアリーズ・ガーデンが有名です。 その一画でアロットメントを見つけました。

 

このコミュニティ・ガーデンは、[Capital Growth]プロジェクトの1つです。

CAPITAL GROWTH - WHAT'S THE BIG IDEA?

首都で植物を育てよう!


"In recent years there has been a tremendous surge of interest in food growing, primarily in response to concerns about food prices, food miles and the environment.  People are also seeking better access to good, healthy and affordable food, whilst enjoying beautiful green spaces and opportunities to meet like-minded locals."




ロンドン市内で、2012年のオリンピックまでに、2012カ所の新しいコミュニティー1つのガーデンが5平方メートル以上、5名以上であることが条件—による食物栽培を実現することを目指しているプロジェクトです。10月1日現在1285件(HPのトップページに件数が載っています)、グリーン・ボランティア数は約35,000人。

このプロジェクトは、持続可能な食料生産を主な目標とする団体”Sustain”が運営しています。健康な生活(英国は米国、オセアニア諸国に次ぐ肥満大国)、フードマイレージの問題、環境の改善、地域の活性化など、都市で食糧を育てることの重要性を訴えています。

具体的には、市民農園希望者には、土地を提供し、資金の援助や専門的なサポートを行います。現存する空き地だけでなく、私有地で使われていない小さな土地を提供する市民もいます。治安の悪い地域や貧しい地区に、積極的に市民農園を作っているようです。 インターネットを使って、他のグループとの交流や情報交換も行われています。 緑の企業からは、園芸資材や種などが提供されたり、ロンドン市長や役所、様々な団体とパートナーシップを形成しながら、活動しています。

リージェンツ・パークにあるアロットメントでは、主に指導者養成のための園芸講座を開催しています。その他、種まき、移植、土づくり、コンポストなど野菜作りの基礎について、パーマカルチャーについてなどの園芸教室もあります。